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【江戸雑学草子】 第06回

2003年10月06日

四千両小判梅葉(しせんりょうこばんのうめのは)

 
 面白いネタを拾ってきたので、また、芝居の話になってしまった。


 江戸時代は、実際に起こった事件を題材にした芝居を禁じていた。

 だが、誰しも事件の成り行きに興味を持つのが当たり前で、こういった芝
 居は大当たりする。


 赤穂浪士の討ち入りも、事件発生の1702年(元禄十五)12月15日から36年
 後の1748年(寛延元)に人形浄瑠璃「仮名手本忠臣蔵」として大坂竹本座で
 初演された。

 時代を太平記の南北朝時代に置き換え、浅野内匠頭(たくみのかみ)は塩冶
 判官(えんやはんがん)、吉良上野介は高師直(こうのもろなお)、大石内蔵
 助は大星由良助(おおぼしゆらのすけ)として登場させている。


 河竹黙阿弥の「四千両小判梅葉(しせんりょうこばんのうめのは)」も実
 際に起きた幕府の御金蔵破りを題材にしている。

 ただ、この芝居は1885年(明治十八)11月千歳座初演。1855年(安政二)の事
 件発生後30年経っていた。

 黙阿弥は1859年(安政六)に御金蔵破り事件を「花街模様薊色縫・十六夜清
 心」として、時代を鎌倉時代に戻してまで脚本を書いたのだが、筋がわか
 らないぐらい書き換えさせられた。

 筋がわからなくても、観客は事件を知っており、話の生々しさを十分に味
 わえたわけで、連日大入りとなる。

 さすがに、お上も黙っておれず、公演打ち切りとさせた。

 事件が、単なる泥棒事件でなく、江戸城内にある御金蔵から千両箱4箱を
 盗み出すと言う、お上にとっては大変不名誉な事件だったからこそ、それ
 を題材にした芝居を禁じた。


 不名誉というか、不祥事でしょう。

 と言うのも、千両箱が盗まれたのを、事件発生から2ヶ月間気が付かなか
 った。しかも犯人逮捕に2年も費やしたのである。

 時が、1853年(安政元)のペリー来航以来、江戸城内が政治的動乱期に入
 り、警備が手薄になっていたのも御金蔵破りを許した理由か。


 四谷見附で、屋台のオヤジの藤岡藤十郎とその客富蔵の二人が、よからぬ
 相談をしていたのもその頃。

 藤岡藤十郎は御三卿の一つ田安家の「お小人(おこびと)」株を買って武
 士になったが、俸禄は15俵一人扶持で、食べるのがやっと。

 生活の足しにと、屋台のおでん屋をやる。

 富蔵は、前科者を示す入れ墨を消し、御天守番の仲間(ちゅうげん)とし
 て住み込んでいた。

 その職業からして、少なからず江戸城内の様子を知っていたのだろう。

 1855年(安政二)2月、二人は北拮橋(きたはねばし)脇の矢来門(やら
 いもん)の柵を乗り越えて江戸城に忍び込むと、御金蔵の鍵を紙に写し取
 り、3月6日夜、千両箱を盗み出した。


 事件の発覚が、2ヶ月後とおくれたのは、その御金蔵は日常の出納用の小
 判ではなく非常用のものを保管してた蔵だったのが理由だ。

 犯人追及に、300人以上の取り調べをしたが、決定的な手がかりはみつ
 からなかった。


 ある日、車坂の目明かし陣十郎が、最近日本橋上槇町に店を出した金貸し
 の信濃屋治兵衛に不審をいだいた。

 治兵衛は、ろくに仕事をしないのに、しばしば故郷の村に帰っては鎮守の
 森に出かける。

 本名は、藤岡藤十郎。

 その友達、富蔵は事件直後から富山に行ったきり帰って来ない。

 富蔵の下女がピカピカの小判を使った事がある。

 どうも怪しい。


 そこで、陣十郎は八丁堀の旦那、同心村井伝太夫の組屋敷に急ぐ。

 一部始終を聞いた村井伝太夫は、南町奉行所与力今泉覚左衛門に報告。


 1957年(安政四)2月26日夜半子の刻(0時)、信濃屋に一斉に踏み込
 む。

 床下に、手つかず(?)の4千両を発見。


 犯人二人は、その年の5月13日、市中引き回しの上、小津原で磔になっ
 た。


 どうでしょう、こう言った事件を題材にした芝居がうけるわけだ。


 ところで、「面白いネタ」とは、

 つまり、日本橋上槇町は、ヤギ薬局がある、日本橋3丁目2番地の事であ
 る。

 ひょっとして、うちの敷地に小判が1枚ぐらい残っていないか?

 ビルの基礎をコンクリートで固めたので、ちょっとやそっとで掘り起こせ
 ない。


 しかも、小判1枚って、(金換算で)現在いくらすると思います?

 文政小判1両=純金7.8g相当で、7〜8千円でしょ。

 掘り返すのは、あきらめた。

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