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【江戸雑学草子】 第27回

2004年01月04日

江戸のお正月二日目

   メシはよいものと気がつく三ヶ日


 元旦からおせち料理ばかりじゃ、3日目には飽きてしまう。

 これは、江戸も今も同じ。


 いまじゃ、デパートは2日から初売りで、

 コンビニは、年中無休。

 ファミレスも食事時には満員なのだろう。

 そんな、具合だから、飽きれば何とでもなる。


 江戸でも、良くしたもので、すし売りが、

 「鰺(あじ)のぅーすしー。こはだのすーしー。」と、

 美声を張り上げて売りに来る。


 一丁も行かないうちに売り切れてしまう有様だった。

 でも、また別なすし売りがくるし、

 売り切れたら、店に帰り、また売り歩く。

 よく売れたそうだ。


 元旦は静かな下町も、二日目となるとにぎやかになる。

 ほとんどの商店は店を開ける。

 開けても、商売はしない。

 暮れに、売れるだけ売ったし、

 まさか、福袋セールなんぞなかったから、

 近在から、わざわざお年玉を手に握って、セール荒らしとは行くまい。


 どちらの店も、年礼客の挨拶を受ける為に開ける。

 もちろん、店主はお得意様に出かけるわけだから、

 留守宅に挨拶に行くことになる。

 何軒も回るわけだから、相手がいないのが、もっけの幸いと言える。

 行った先で、扇子の様な形式的な年賀の進物を置き、年始帳に名前を書く。


 迎える方も、

 店の正面に屏風を立てて、

 敷物を敷いて、その上に年賀の進物を入れるお盆と年始帳を置き、

 仕立ておろしの着物を着た番頭、手代、小僧が

 並んで座って待っている。


 年始に回る町人の礼装は、身分相応でなく、身代相応で、

 大店(おおだな)の主人ともなると、

 小刀を腰にさし、黒羽二重(くろはぶたい)の紋付、

 麻裃(あさがみしも)、白足袋といういでたちで、

 手代の他に出入りの鳶の頭(とびのかしら)が、

 紺木綿の腹掛けをして定紋を染めた革羽織を着てお供して、

 後ろから年賀の進物の入った風呂敷を胸にかけた小僧がついて行く。


 もう少し格の低い店の主人なら、羽織袴だけで、

 小僧に出入りの職人一人ぐらいがお供する。


 さらに下の小さな商店主になれば、

 お供は小僧だけと言う具合に手軽になっていく。


 さて、

 大晦日に、カウントダウンなど行く者もいないから、

 今年の我が家のお正月は、久しぶりに家族全員がそろった。


 神戸の産婦人科医のK君から送ってもらった

 灘の生一本大黒正宗で、お祝いし、

 用意したおせちを九割方平らげると、

 日枝神社に初詣に行き、六本木で映画を見ようと言うことになった。


 私が先頭で、年礼の行列というわけにはいかない。

 子供達全員、私より図体がでけーし、

 一人一人我が物顔で歩いてやがる。


 それでもって、境内で御酒でも飲もうやと、誘ってくれるのは嬉しいが、

 お足は私の財布からしか出ていかない。


 すると、かーちゃんが、

 ジーパンに着古したジャンパー姿の私を見て、

 「お正月なんだからさー、ちっとは、こざっぱりした格好をおしヨ!」

 「あす、デパートで福袋でも買っておいで」

 あーあー、風呂屋の看板で、びた一文出さねーわけだからサ。


 お心遣い、蟻が十匹、猿五匹。

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