【江戸雑学草子】 第34回
2004年01月29日
百年目
えーッ、毎度おなじみの落語「百年目」でございます。
えらく真四角な堅物と、世間から見られていた番頭さんがですね、
芸者、幇間(たいこもち)をつれて、向島に花見に行きまして、
酔った勢いで、目隠しさせられちゃって、鬼ごっこなどに興じております。
まるで、京都は島原の遊郭で遊(あす)んだ大石内蔵助って、ぐあいですな。
「さあッ、つかまえた」と、目隠しをとると、
なんと旦那さまー!が目の前にいたってスジで、
つまりは、ここで会ったが百年目って事で、「落ち」になります。
旦那さんは、番頭さんの事を、
熱心な番頭さんのおかげで商売もうまく行っているが、
下ァン者(もん)に、いつも小言ばかり言っており、
少しは角の取れた丸い人間になって、下ァン者からしたわれる人間に
なってほしいなァーと思っていたンですよ。
番頭さんが、店の帳面に穴ァ開けるわけでなく、
自分で稼いだ銭(おあし)でもって、
粋に遊んでいる姿を目の当たりにして、
旦那さんは、感心しつつ安心なすったンでさァ。
そこで旦那さんは、番頭さんあっての私、
下ァン者あっての番頭さんって事を、
センダン(栴檀)となんえんそぉ(難莚草)の
持ちつ持たれつの関係を例にして諭(さと)し、
来年には分家をだしてやろうじゃないかと、なる。
まぁ、当世で申しますと、
人事管理のビジネス書という、ありがたァーいお話でございます。
この番頭さんは、四十三歳(しじゅうさん)になるんですが、
小僧の時から居(い)っきりの、家にとりついたウワバミみたいな方ですな。
田舎からで来て、長年商売の道を学び、
この歳でのれんを分けてもらい、お嫁さんももらって所帯を持つんですよ。
このように商家では、男の独身者が多かったわけで、
供給する方の女性の数が少なかった原因に、
需要が少なかった事が上げられますな。
でも、ご婦人と遊ばしてくれる場所や機会があったわけですから、
不自由だと言う実感はわかなかったでしょう。
肌もあらわなべべ着たご婦人にお酌してもらって、
うまかねーェカラオケに拍手をもらって、
いい気分にひたってるところ、
携帯に伝言メモが入ってきたりして、
「早く帰ってきなさーィ」って殺気だった声聞くと、
これぞ、百年目でございまして。
なんたって、この世で一番怖いのは、かあちゃんですから。
えんま様より怖い!
えんま様が、トウガラシ舐めた様な顔してねーェ。
「ちやほやされて、いい気になってんじゃないよーォ!」
「あんたなんかに惚れる人(しと)なんざ、この世に一人もいないよッ」
ごもっともだから、くやしい。
|